2030年度電源構成を経済産業省が決定|パブコメの結果と特徴

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パブリックコメントはどう反映されたのか?

(2015年7月17日)

経済産業省は7月16日、2030年度の電源構成を正式に決定しました。文章を一部修正しただけで、電源構成比率は6月1日に示した政府案の通りです。

 

7月1日までの約1ヵ月間パブリックコメントを実施。2,060件の意見が寄せられました。しかし、それらの意見を踏まえ、電源構成比率が見直されることはありませんでした。

 

パブリックコメントに寄せられた意見

  • 原子力発電の活用は国民の意思に反する。
  • 原子力発電の安全は確保できない。
  • 放射性廃棄物処理の問題が解決していない状況で原子力発電を活用すべきではない。
  • 再生可能エネルギーの導入を拡大すべきだ。
  • ベースロード電源という考え方は時代遅れ。欧州ではもう使われていない。
  • 原発依存度を低減し、自然エネルギーを増やすという「基本方針」に反する。

このように、政府案に対して、疑問や反対の意見が寄せられています。

 

政府は一部の意見しか公表しない

経済産業省は、パブリックコメントに寄せられた意見のうち一部を抜粋して、「長期エネルギー需給見通し小委員会」に示しただけ。全ての意見を公表していません。

 

また、原発の比率を約2割にすることや、電源構成全体への賛否の割合についても、「数え方が分からない」として分析していません。

ちなみに、民主党政権のときには、新たなエネルギー戦略について、パブリックコメントで集まった約8万9千件の意見を全て公表。原発比率に対する賛否などの分析結果もまとめました。「数え方が分からないから分析できない」などという言い訳は、成り立ちません。

 

形だけのパブリックコメント

1か月間のパブリックコメントを実施しましたが、それを踏まえた電源構成比率についての見直しは行われませんでした。

 

パブコメは無意味なのか

パブリックコメントに対する考え方は、「長期エネルギー需給見通し小委員会」委員長の坂根正弘・コマツ相談役が、記者団に語った次の言葉で明らかです。

 

「本当にバランスを考えた上での発言を(パブコメに)期待できますか」

 

これが、「有識者会議」の委員長のパブリックコメントに対する本音なのです。「パブリックコメントなど必要ない」という考えです。「有識者会議」の人選をするのは政府です。政府の責任が問われます。

 

委員の反対意見もパブコメも無視

会議では、委員の一部から「未来志向の議論をしていない」「原発事故後の国民の価値観と一致しているのか」など、反対や疑問の声が出されました。

 

しかし、政府の電源構成(案)について、多くの委員は「あるべき姿だ」などと支持を表明し、坂根正弘・委員長が「政府へ実行を要請したい」と発言。上田隆之・資源エネルギー庁長官も「(原発の)事業環境整備などに努め、実現に向けて最大限努力する」と、あくまで原発を推進する考えを示しました。

 

安倍政権では、国民の意見を無視する手法が横行しています。その最たるものが、安保法案の衆院での強行採決です。

 

国会審議を通して、法案の違憲性が明らかになりました。また、どの世論調査でも、8割以上が「政府の説明は十分ではない」と答えています。6割以上が「今国会での成立に反対」としています。国民の過半数が「憲法違反」だと考えています。

 

それにもかかわらず、強行採決です。これほど国民の意思をないがしろにする政権があったでしょうか。まさに独裁政治です。

 

パブコメで寄せられた意見と経産省の回答

パブリックコメントで寄せられた意見と、それに対する経済産業省の回答を見てみましょう。2つほどピックアップしておきます。

 

経済産業省の回答が、いかに「かみ合っていない」か、いかに「原発ありき」か、よくわかります。以下は、その概要です。

 

原子力発電の安全は確保できない

「世界最高水準の規制基準」という主張には根拠がない。日本の規制基準には、過酷事故対策について、電源車の待機のような追加的対策だけで及第点を与えるという重大な欠陥があり、住民避難対策に至っては、原発立地自治体に丸投げしている。

 

評価基準をパスしても、自然現象がそれを上回ることは十分考えられる。世界有数の火山国・地震国の日本では、原発事故を完全に防御することは不可能。

経済産業省の回答

原子力規制委員会によって、世界最高水準の新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発の再稼働を進めることとしている。

 

この新規制基準は、福島第一原発事故の教訓を踏まえ、過酷事故を発生させない対策や、万が一過酷事故が発生した場合にも対処できる対策を要求しており、我が国の地震、津波、火山といった自然条件の厳しさ等も勘案した上で策定されている。

 

原子力発電の活用は国民の意思に反する

世論調査でも6~7割の国民が原発の再稼動反対や廃止を支持している。原発からの脱却を求める国民の意思が反映されていない。

経済産業省の回答

原子力発電については、2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画において「重要なベースロード電源」と位置づけられ、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」としている。

 

審議会でまとめられた「長期エネルギー需給見通し(案)」は、行政手続法上の意見募集の対象となる「命令等」には該当しないが、パブリックコメントを行っている。

 

パブリックコメントの結果はこちら

※ 経済産業省のWEBページにリンクしています。

 

 

経済産業省の回答を見ると、原子力発電に対する疑問や反対の意見に対し、「閣議決定したエネルギー基本計画で、『原子力規制委員会によって規制基準に適合すると認められた原発は再稼働を進める』としている」というのが、ほぼ全ての回答にはいっています。

 

つまり、「安倍内閣が決定したことだ。つべこべ言うな」というわけです。「パブリックコメントも、本来やる必要はないが、やっているんだ」というのです。

 

しかし、パブリックコメントを実施しても、その結果を踏まえて見直しを行わないのであれば、それは形だけのものにすぎず、国民の意思を無視しているのと同じです。

 

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